マークダウン入門:Markdownの基本と書き方

マークダウンとは、入力した記号を構造化された文書に変換するプレーンテキストの記法で、コアの書き方は約10分で習得できます。 John Gruber氏がAaron Swartz氏の協力を得て2004年3月に公開し、22年経った今も、GitHubのREADMEファイル、Obsidianのノート、Redditの投稿の整形に使われています。システム全体は2つの部品でできています。.md拡張子で保存されたテキストファイルと、そのテキストをHTMLに変換するプロセッサーです。以下の内容はすべて、この2つの部品の上に成り立っています。

マークダウンとは?

マークダウンとは、#、*、> といった目に見える文字でプレーンテキストに書式の指示を加える、2004年に生まれた軽量マークアップ言語です。 行頭の # は見出しになります。単語を2つのアスタリスクで囲むと太字になります。ハイフンは箇条書きの始まりです。最初のリリースはMarkdown.plという1本のPerlスクリプトで、Gruber氏のサイトDaring Fireballで公開されました。

HTMLやLaTeXをはじめとする重量級のマークアップ言語は、タグやコマンドでコンテンツを包み込み、生のファイルを読みにくくします。Markdownは正反対の道を選びました。Gruber氏は「変換前のマークダウンファイルがプレーンテキストのまますらすら読めること」というただ1つの目標を軸にシンタックスを設計しました。## Pricing という行は、マークダウンを一度も見たことがない人にも見出しだと分かります。この読みやすさこそが、2004年のブログから2008年のGitHub、2010年のStack Overflow、そして2010年代のObsidianやJoplinといったノートアプリへとフォーマットが広がった理由です。

マークダウンとWYSIWYGエディタの違い

Microsoft WordやGoogle DocsのようなWYSIWYGエディタはツールバーのボタンで書式を適用して命令を隠しますが、マークダウンはすべての命令を文字としてファイル内に残します。 WYSIWYGは「what you see is what you get(見たままが得られる)」の略です。Wordではフレーズを選択して太字ボタンをクリックし、その決定は目に見えないバイナリXMLとしてファイルに保存されます。マークダウンでは **launch date** と入力し、2組のアスタリスクそのものが書式になります。

違いは保存時に現れます。.docxファイルを正しく開けるのは、Word、LibreOffice、Pagesを中心とした少数のプログラムだけです。マークダウンファイルは、Notepadからvim、VS Codeまで、1970年代以降にリリースされたあらゆるテキストエディタで開けます。多くのマークダウンエディタは、分割画面のライブプレビューで見た目の差を埋めています。左ペインに生のシンタックス、右ペインにレンダリング結果が表示され、キー入力のたびに更新されます。Wordの即時フィードバックと、プレーンテキストの透明性を同時に手に入れられるのです。

マークダウンが使われる理由

ライターがマークダウンを選ぶ実用的な理由は4つあります。可搬性、プラットフォーム非依存、将来性、そして対応範囲の広さです。 いずれもプレーンテキストという土台に由来します。

  • 可搬性。 マークダウンファイルは変換なしでアプリケーション間を移動できます。iA Writerで下書きし、VS Codeで編集し、Ghostで公開する。ファイルの形は一切変わりません。.docxや.pagesのような独自形式は、コンテンツを1つのベンダーのエコシステムに閉じ込めます。
  • プラットフォーム非依存。 マークダウンはWindows 11、macOS、Linux、iOS、Androidでまったく同じように動作します。ファイルはUTF-8のテキストなので、2026年にスマートフォンで入力したメモは、デスクトップでも1バイトも違わずに開けます。
  • 将来性。 ソフトウェアは消えても、テキストファイルは生き残ります。1990年にワープロ市場を支配したWordPerfectの古いファイルは、今では復旧作業の対象です。2004年のマークダウンファイルは今でも1秒未満で開きます。20年単位の寿命を持つ論文、契約書、書籍の原稿にとって、これは重要な違いです。
  • 対応範囲の広さ。 GitHub、GitLab、Reddit、Discord、Notion、Slackなどのプラットフォームがマークダウン入力に対応しています。書き方を一度覚えれば、そのすべてで役立ちます。

マークダウンが処理される仕組み

マークダウンは4ステップのパイプラインを経て整形された文書になります。.mdファイルを書き、プロセッサーが解析し、HTMLを出力し、ブラウザがそのHTMLを表示します。 パーサーや実装とも呼ばれるプロセッサーは、すべてのマークダウンアプリの内部で動くエンジンです。有名なプロセッサーにはmarkdown-it、marked、cmark、Pandocがあり、cmarkは一般的な文書を10ミリ秒未満で変換します。

ステップ何が起こるか
1. 書くマークダウンのテキストをプレーンなファイルに保存する# Q3 Report を含むnotes.md
2. 解析プロセッサーがシンタックスを読み取るmarkdown-itが # 記号をスキャンする
3. 変換プロセッサーがHTMLを出力する<h1>Q3 Report</h1>
4. 表示ブラウザがHTMLをレンダリングする画面上のスタイル付きH1見出し

ツールによって、このパイプラインが見える範囲は異なります。ライブプレビュー付きのオンラインエディタは、キー入力のたびにステップ2から4を裏側で実行します。Hugoのような静的サイトジェネレーターは、1回のビルドコマンドで数百のファイルに同じパイプラインを適用します。パイプラインそのものは変わらず、出力されたHTMLは任意のCSSスタイルシートと組み合わせられ、Pandocのようなツールを介してPDF、EPUB、.docxへさらに変換することもできます。

マークダウンの使い道

マークダウンがこなす代表的な用途は7つあります。Webサイト、ノート、文書、書籍、プレゼンテーション、メール、技術ドキュメントです。 10分で覚えた同じシンタックスが、この7つすべてに通用します。

Webサイト

Hugo、Jekyll、Eleventyといった静的サイトジェネレーターは、マークダウンファイルのフォルダからWebサイト全体を構築します。 2008年にリリースされたJekyllは、GitHub Pagesとその無料ホスティングを支えています。コンテンツプラットフォームもマークダウンに対応しています。Ghostにはネイティブのマークダウンエディタがあり、WordPressはブロックエディタ経由でマークダウンを受け付けます。ブログ記事は1つの.mdファイルであり、Gitのようなバージョン管理システムがそのすべての編集を追跡します。

ノートと文書

Obsidian、Joplin、Bear、Simplenoteなどのノートアプリは、すべてのノートをマークダウンとして保存します。 中でもObsidianは各vaultを自分のディスク上の.mdファイルのフォルダとして保持するため、5,000件のノートコレクションも標準的なツールで検索できます。手紙、議事録、課題といった単発の文書なら、マークダウンエディタからそのままPDFやHTMLに書き出せます。書き出したPDFは印刷もメール添付もアップロードも自由です。

書籍とプレゼンテーション

Leanpubはマークダウンファイルのフォルダを、PDFとEPUB形式の完成した電子書籍に変換します。Pandocを使えば同じことがコマンドラインでできます。 この方法で長編小説や300ページの技術書を出版した著者もいます。スライドなら、MarpやRemarkのようなツールがマークダウンファイルをプレゼンテーション資料に変換します。--- 区切り1つがスライド1枚に対応し、40枚を手作業で整形したPowerPointファイルよりもはるかに速く修正できます。

メールと技術ドキュメント

Markdown Hereのようなブラウザ拡張機能は、Gmailなどのwebメールの中で、マークダウンを整形済みのHTMLメールに変換します。 ドキュメントはマークダウンの本場です。GitHubはすべてのリポジトリの先頭にREADME.mdをレンダリングし、MkDocs、Docusaurus、Read the Docsなどのジェネレーターは.mdソースファイルから本格的なドキュメントサイトを構築します。Metaが2017年にリリースしたDocusaurusは、プレーンなマークダウンページにバージョン管理と検索機能を追加します。

マークダウンのフレーバー:CommonMarkとGFM

マークダウンのフレーバーとはシンタックスの特定のバリエーションのことで、特に重要なのは2014年に仕様化されたCommonMarkと、2017年に仕様化されたGitHub Flavored Markdownの2つです。 2004年のGruber氏のリリースは、ネストしたリストのインデント方法など、細かい挙動を未定義のまま残していました。そのため初期のプロセッサーは出力で足並みがそろわず、同じファイルがツールによって違って表示されました。

CommonMarkはこれを解決しました。John MacFarlane氏やJeff Atwood氏を含むワーキンググループが2014年9月に公開したCommonMark仕様は、600件を超えるテストケースですべての解析ルールを固定しています。Stack Overflowは2020年6月にレンダリングをCommonMarkへ移行しました。

GitHub Flavored Markdown(GFM)は、GitHubが2017年3月に正式化したCommonMarkの厳密なスーパーセットです。テーブル、タスクリスト、取り消し線、自動リンク、言語タグ付きフェンスコードブロックという5つの拡張を追加しています。製品ページに「マークダウン対応」と書かれていたら、どのフレーバーを指すのか確認してください。GFMのテーブルは、CommonMarkのみ対応のツールではただのパイプ文字として表示されるからです。2026年時点で最も安全なデフォルトはGFMであり、本サイトのエディタがレンダリングするのもこのフレーバーです。

今日からマークダウンを書き始める方法

ブラウザベースのマークダウンエディタを開き、# に続けてタイトルを入力すれば、それがあなたの最初のマークダウンです。インストールもアカウント作成も必要ありません。 分割ペインのエディタなら入力しながらレンダリング結果を確認でき、マークダウンの使い方を学ぶうえで最速のフィードバックループになります。

まずは使用頻度の高い5つの要素から始めましょう。見出しの #**bold***italic*、リストの -、リンクの [text](url) です。この5つで日常的な書式の約90%をカバーできます。議事録やTo Doリストなど実際の文書を書き直して練習し、結果を.mdファイルとして保存してみてください。その先は、基本シンタックスガイドが9つのコア要素すべてを、拡張シンタックスガイドがGFMのテーブル、脚注、タスクリストをカバーしています。

よくある質問

マークダウンを書くのにソフトのインストールは必要ですか?

Webブラウザだけで十分です。オンラインのマークダウンエディタなら、執筆、プレビュー、エクスポートまでインストールなしで完結します。 必要になったら、Obsidian、iA Writer、VS Codeなどのデスクトップアプリがオフラインアクセスとローカルファイル管理を追加してくれます。

マークダウンファイルの拡張子は何ですか?

マークダウンファイルの拡張子は.mdで、あまり使われない代替として.markdownもあります。 どちらも中身はまったく同じプレーンテキストで、cmarkからPandocまで、すべてのマークダウンプロセッサーが両方を受け付けます。

マークダウンの習得にはどれくらい時間がかかりますか?

コアの5要素は約10分、9要素からなる基本シンタックス全体でも1回の学習で身につきます。 テーブルやタスクリストといったGFM拡張はさらに15分ほどです。まともな整形に数週間かかるLaTeXと比べてみてください。

CommonMarkとGFMの違いは何ですか?

CommonMarkはコアのマークダウン解析を標準化した2014年のベース仕様で、GFMはテーブル、タスクリスト、取り消し線、自動リンク、フェンスコードブロックを追加したGitHubの2017年のスーパーセットです。 有効なCommonMark文書はすべて有効なGFMでもあるため、GFMを前提に書くのが実用的な選択です。

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